2016-11-09
無申告は、申告納税制度の下で自発的に納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすことになるため、的確かつ厳格な対応が求められる。無申告者は、その存在自体の把握が難しいことから、国税当局は、有効な資料情報の収集や活用を図り、的確な課税処理に努めている。国税庁が今年6月までの1年間(2015事務年度)に実施した高額・悪質と見込まれた無申告者に対する実地調査は7445件(前事務年度7589件)行われた。
実地調査の結果、申告漏れ所得金額の総額は1465億円(前事務年度1417億円)把握した。追徴税額は、総額で150億円(同137億円)、1件当たりでは202万円(同181万円)だった。2015事務年度は実地調査全体(特別・一般)が4万8043件行われているから、全体の約16%が無申告者に対する調査に充てられ、実地調査全体の申告漏れ所得金額4522億円の約32%が無申告者に係るものだったことになる。
1件当たりの申告漏れ所得金額は1968万円となり、前事務年度の1867万円から5.4%増加、実地調査全体の1件当たり申告漏れ所得金額941万円の約2.1倍となる。前事務年度に比べ調査件数は1.9%減少したが、申告漏れ所得金額の総額は3.4%増と増えている。こうした調査結果からいえることは、結構高額な所得がありながら、国税当局にはばれまいと高をくくって申告しない納税者がいかに多いかということだろう。
例えば、副業で行っていたネット販売を申告していなかった事例がある。調査対象者Dは、サラリーマンだが、部内資料等から、インターネットで商品の取引を行っており、多額の利益を得ているにもかかわらず、申告していないことが想定された。調査において、Dは、給与収入以外の収入は一切ないと主張していたが、取引先銀行の履歴を確認したところ、多額の個人名義の入金がある事実が確認された。
Dは、副業の収入を隠すため、商品の販売代金であるにもかかわらず、事業性のある入金と分からないようにするため、架空の個人名義での振込みを装うことで、申告をしていなかったことが明らかになった。Dに対しては、所得税5年分の申告漏れ所得金額約6400万円について重加算税込みの約1400万円の追徴税額及び消費税2年分の重加算税込みの税額(同)約1000万円が追徴されている。