居住用賃貸建物に係る消費税の仕入税額控除の適正化

2020年度税制改正においは、居住用賃貸建物の消費税還付スキームにメスが入り、居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度が適正化された。事業者が、国内において行う居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するもの)に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないこととされた。

そこで、仕入税額控除の制限を受けない「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」とは、建物の構造や設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなものをいう。例えば、その全てが店舗である建物など建物の設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物や、旅館・ホテルなど、旅館業法に規定する旅館業に係る施設の貸付けに供することが明らかな建物などが該当する。

一方、仕入税額控除の制限を受ける「高額特定資産」とは、一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が1000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいう。また、「調整対象自己建設高額資産」とは、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額の100/110に相当する金額等の累計額が1000万円以上となったものをいう。

以上のように、建物の全てが店舗である建物などは居住用賃貸建物に該当しないのだが、例えば、建物の一部が店舗用になっている居住用賃貸建物を、その構造及び設備その他の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分とそれ以外の部分(「居住用賃貸部分」)とに合理的に区分しているときは、その居住用賃貸部分以外の部分に係る課税仕入れ等の税額については、これまでと同様、仕入税額控除の対象となる。

居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の適正化は、2020年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入れ等の税額について適用される。ただし、経過措置があって、2020年3月31日までに締結した契約に基づき2020年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入れ等については、上記の制限は適用されないこととされている。