遊休固定資産の償却不足額を評価損として損金算入

事業のために取得した固定資産のうち、稼働を休止しているものを「遊休資産」という。稼働率が下がったため使用を停止している製造用機械や閉鎖した店舗跡地など、遊休状態のものがないだろうか。遊休固定資産は、会社に収益をもたらすものではないので、早期に売却等の処分を検討することが望まれる。一方で、稼動休止した遊休固定資産の税務上の取扱いも問題となる。

法人税法では、減価償却資産が1年以上にわたり遊休状態にあることにより、その固定資産の価額が帳簿価額を下回ることとなった場合や、法人の有する資産が、やむを得ない事情によりその取得のときから1年以上事業の用に供されないため、その固定資産の価額が低下した場合には、評価損の計上を認めている。つまり、1年以上遊休状態にある減価償却資産については、償却不足額を評価損として損金算入できることになる。

このように、遊休固定資産の税務上の取扱いは、一定の前提条件の下で損金経理が認められている。決算対策を考える際、手元に遊休資産がある場合には、節税方法として一考する価値がある。そのためには、本当に遊休状態にあったことを証する資料を準備しておく必要がある。ただ実際は遊休固定資産であっても、継続して償却を行っているものも多いため、評価損を計上できるケースは意外と少ないかもしれない。

法人税法では、事業の用に供しているもの以外は減価償却をすることはできないが、稼動を休止している遊休固定資産であっても、その休止期間中に必要な維持補修が行われており、いつでも稼動し得る状態にあるものについては、減価償却資産に該当するものとされる。なお、固定資産には、機械装置や器具備品のような有形固定資産だけでなく、ソフトウエアのような無形固定資産も含まれる。

ソフトウエアは無形固定資産だが、有形固定資産と同様にその耐用年数に応じて減価償却を実施するためだ。ソフトウエアの場合は、例えば、自社利用であれば、そのソフトウエアによる業務が廃止され、利用しなくなったことが明らかな場合、または他のソフトウエアを利用することになり、従来のソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合などで、その損失の損金算入が認められる。

ところで、その使用を廃止して、今後は通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産については、機械設備等の撤去や廃棄する費用が膨大で、すぐには処分できないケースでも、現状有姿のまま除却処理を行うことができる。これを「有姿除却」という。有姿除却による除却損を計上する場合には、客観的にみて、今後通常の方法により固定資産が使えないような状態にしておくことも重要となる。