2020-06-02
金融庁はこのほど、「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」を公表した。これは、企業会計基準委員会が公表した議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症に関する開示の考え方」を踏まえ、経営者視点による充実した開示を行うことで投資家と企業との建設的な対話を通じた持続的な企業価値の維持・向上に繋げるとともに、資本市場の信頼性向上にも資することを期待したもの。
金融庁が有価証券報告書への開示の充実を求めているのは、(1)税務情報における追加情報の開示、(2)非財務情報(記述情報)の開示、(3)有価証券報告書レビューによる対応の3項目。(1)では、新型コロナウイルス感染症の影響のように不確実性が高い事象については、財務情報である追加情報において、会計上の見積りに用いた仮定をより具体的に開示することが強く期待されるとしている。
(2)では、2020年3月期から適用される改正開示府令において、会計上の見積り及び見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて、「その見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響」などを開示することが求められる。ただし、この内容を財務情報である追加情報において開示した場合には、非財務情報の開示ではその旨を記載することによって省略することができる。
また、「会計上の見積り」以外では、今般の新型コロナウイルス感染症の影響について、「事業等のリスク」における感染症の影響や対応策、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」における業績や資金繰りへの影響分析、経営戦略を変更する場合にはその内容等の充実した開示を行うことが強く期待されるとしている。
(3)では、金融庁が2020年3月27日に公表した有価証券報告書レビューの実施概要が更新され、改正開示府令に対応した非財務情報に対する法令改正関係審査の対象に、新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示が含まれる旨が明記されたほか、上記(1)の財務情報における追加情報の開示についても、審査対象に含める旨が公表されている。有価証券報告書への記載は税務も関係してくるだけに十分に注意を払いたいところだ。
「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示」は↓
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200521/01.pdf