2015年度に外国税務当局に366件の情報提供を要請

経済のグローバル化に伴い、企業や個人の海外取引や海外資産の保有・運用形態が複雑・多様化するなか、国税庁では、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換を積極的に実施している。わが国の情報交換ネットワークも、11月1日現在で66条約(102ヵ国・地域に適用)まで拡大している。ところで、租税条約に基づく情報交換には、主に、「要請に基づく情報交換」、「自発的情報交換」、「自動的情報交換」の3つの類型がある。

国税庁が公表した6月までの1年間(2015事務年度)における租税条約等に基づく情報交換事績によると、同年度に国税庁から外国税務当局に発した「要請に基づく情報交換」の要請件数は366件と、前事務年度(526件)から約30%減少した。地域別にみると、アジア・太平州の国・地域向けの要請が291件と、全体の約80%を占める。他方、外国税務当局から国税庁に寄せられた要請件数は158件と、同(125件)から約26%増加した。

「自発的情報交換」については、2015事務年度に国税庁から外国税務当局に提供した件数は186件(前事務年度317件)。他方、外国税務当局から国税庁に提供されたのは33件(同1258件)だった。また、「自動的情報交換」は、国税庁から外国税務当局に提供した件数は約18万8千件(同約13万7千件)。他方、外国税務当局から国税庁に提供されたのは約11万7千件(同約13万2千件)だった。

近年、国境を越える経済取引、資産の移転等が活発化するなか、国際的な脱税及び租税回避行為に対する取組みが重要な課題となっており、現在、国際的な税務当局間の協力の法的枠組みである租税条約等のネットワークの拡充が進められている。国税庁としても、国際協力の観点から、こうしたネットワークを活用して外国税務当局に対する「自発的情報交換」を積極的に実施しているという。

なお、「要請に基づく情報交換」とは、個別の納税者に対する調査等において、国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合に、条約等締結相手国・地域の税務当局(外国税務当局)に必要な情報の収集・提供を要請するもので、海外法人等との取引の内容や、海外金融機関との取引の内容など、国際的な取引の実態や海外資産の保有・運用の状況を解明する有効な手段となっている。

「自発的情報交換」は、例えば、自国の納税者に対する調査等の際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と思われる情報を自発的に提供するもの。また、「自動的情報交換」は、法定調書等から把握した非居住者への支払等に関する情報を、支払国の税務当局から受領国の税務当局へ送付するもので、国税庁では、提供資料を申告内容と照合し、海外投資所得等の内容を確認する必要がある者に対して税務調査するなど、効果的に活用している。

2015年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要は↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2016/joho_kokan/pdf/joho_kokan.pdf