2016-12-06
国税庁はこのほど質疑応答事例を更新したが、所得税関係では、昨今問題となっているマンションの施工不良に伴う補償金についての事例が盛り込まれている。照会内容では、居住するマンションの建物の一部に破損が生じたため、耐震安全性検証を行ったところ、設計及び施工について、新築当時の建築基準法に規定されていた耐震基準を満たしておらず、耐震安全性が低いことが判明した。
そこで、施工業者は、耐震補強工事の実施のため、マンションの居住者に一時的な退去を依頼するとともに、その居住者に対し、損害賠償金として(1)仮住まい先への転居に必要な移転費用相当額、(2)転居後の家賃相当額及び(3)仮住まい先からマンショへの転居に必要な移転費用相当額の補償金を支払うこととした。照会内容は、この施工業者から受領する補償金の課税関係はどうなるのかというもの。
これに対し、質疑応答事例では、「照会の補償金についてはいずれも非課税」と回答している。それは、所得税法上、心身に加えられた損害につき支払いを受ける慰謝料その他の損害賠償金及び不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払いを受ける損害賠償金については非課税とされていることによる。例えば、交通事故に伴い受領する賠償金などは典型的なものといえる。
照会の補償金については、いずれも施工不良に基因して追加的に生ずる費用の実費を補てんする損害賠償金として支払われるものであることから、不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金として非課税になるとしている。ただし、名目はどうあれ、実質からみてごね得によるものだったり、将来予想される損失の補償となれば、一時所得などとみて課税されることになろう。
なお、この質疑応答事例には、納税者から寄せられた照会に対して国税当局が回答した事例のうち、他の納税者にも広く参考となるものを掲載している。ポイントが分かりやすいよう要旨のみを掲載しているため、個々の納税者が行う具体的な取引の課税関係は、その取引に係る事実関係等に応じて、この回答の内容と異なることがあるので注意が必要だ。具体的な取引の課税関係を照会したい場合には、最寄りの税務署・国税局に尋ねてほしい。
この件は↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/shotoku/01/11.htm