2020-10-07
国税不服審判所はこのほど、2020年1月から3月分の裁決事例を同所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、8事例(国税通則法関係3件、所得税法関係1件、法人税法関係2件、相続税関係1件、印紙税法関係1件)だった。今回は6事例において納税者の主張が認められ、全部又は一部が取り消されており、実務家にとっても参考となろう。
このうち、所得税法関係では、財形貯蓄補助金メニューが含まれていても、換金性のあるカフェテリアプランにはならないとした事例がある。原処分庁は、本件カフェテリアプランには財形貯蓄補助金メニューが含まれ、換金性のあるプランと認められ、同プランにおける各経済的利益の全てが源泉所得税等の課税対象になるから、請求人の被合併法人であるA社には人間ドック等の補助に係る経済的利益について源泉徴収義務がある旨主張した。
しかし裁決は、本件プランにおいて、(1)各使用人が各経済的利益として受ける額は、各使用人の職務上の地位や報酬額に比例して異なるものではなく、福利厚生費として社会通念上著しく多額であるとは認められず、(2)その財形貯蓄補助金メニューは、各使用人のうち一定の期間内に財形貯蓄をした使用人に対してその補助として金銭が支給され、何ら要件なく各使用人に付与されたポイントを金銭に換える内容とは認められないと指摘。
さらに、(3)その財形貯蓄補助金メニュー以外の各メニューについても、一定の要件を充足しなければ補助等を受けられないものであり、自由に品物を選択できるとか、何ら要件なく金銭や商品券等の支給を受けることを選択できることを内容とするものではなく、残ポイントがある場合にその残ポイントに相当する金銭が支給されるものでもない、とも指摘した。
裁決は、以上のことからすると、本件プランは、ポイントを現金に換えられるなど換金性のあるプランとは認められず、本件各経済的利益については、各使用人が選択した現に受ける補助等の内容に応じて、課税対象となるか判断することになるとした。したがって、A社にはその人間ドック等の補助に係る経済的利益について源泉徴収義務はないと認められることから、各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分の全部を取り消している。