2016-12-16
会計検査院は12月2日、租税特別措置(所得税関係)の適用状況等についての報告書を、衆参議長及び内閣総理大臣に提出した。行政機関が行う政策の評価に関する法律により、法人税関係の特別措置については各省庁の政策評価が義務付けられ、また、2010年4月に施行された租特透明化法により、税負担を軽減する法人税関係の特別措置に関しては適用実態調査結果の国会報告が行われている。
しかし、所得税関係については政策評価が義務付けられておらず、これまで適用実態調査も行われていなかった。そこで、会計検査院では、関係省庁及び財務省による所得税軽減措置に対する効果等の検証が行われているか、減収見込額が多額に上っている所得税軽減措置が必要最小限のものとなっているか、などに着眼して対象となった109措置(関係省庁の政策単位別件数296件)の適用状況を検査した。
その結果、2010年度から2015年度までの6年間に、政策評価も税制改正要望の際の検証のいずれも行っていないものが80件あった。また、政策評価又は税制改正要望の際の検証のいずれかが行われた実績のある216件のうち、適用実績を把握等していなかったものは、法人税軽減措置と共通する所得税軽減措置では154件のうち63件、法人税軽減措置と共通性のない所得税軽減措置では62件のうち24件となっていた。
減収見込額が多額に上っている所得税軽減措置としては、2015年度減収見込額8910億円の「申告不要配当等特例等」がある。同特例は、上場会社から支払を受ける配当等を有する納税者について、各年分の所得税の計算上、これを除外して総所得金額を計算して確定申告することができるとするなどの措置である。ただし、大口株主等は、事業参加的側面が強いことから、これは適用できないこととなっている。
また、1830億円の「年金控除特例」が取り上げられた。この特例は、標準的な年金以下の年金のみで暮らす高齢者世帯に十分な配慮を行うことを目的として、年齢が65歳以上の納税者を対象に、公的年金等からの控除額を上乗せする措置である。会計検査院は、「申告不要配当等特例等」、「年金控除特例」ともに関係省庁において、国民の納得できる必要最小限のものとなっているかなどの検証が十分にされていない、と指摘している。
この件は↓
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/28/h281202.html