2020-10-23
行政手続きの押印廃止については、菅義偉首相が10月7日、規制改革推進会議で「全ての行政手続きの見直し方針をまとめていただきたい」と指示、また、河野太郎行政改革担当相が先月、行政手続きで印鑑使用を原則廃止するよう各省庁に要請している。これらの政府・与党の方針を受けて、税務申告などの納税手続きについても、国税通則法に記載された納税手続きに関する規定を見直す方向で検討される模様だ。
国税通則法では、納税手続きで必要な書類について原則的に押印を求める規定があり、同法を改正すれば、原則ほとんどの手続きで押印が不要となる。例えば、所得税の申告等、法人税の申告等、消費税の申告等、相続税や贈与税等の申告等、その他の届出など、基本的には、ほとんどの税務申告等の手続きにおいて、押印が不要になるとみられている。改正は、2021年度の与党税制改正大綱に盛り込み、早期の実現を目指す。
ただし、一部の税務申告等の手続きでは押印が残るようだ。現行では、各種納税猶予制度などの担保の提供があるケースや、相続税の申告において遺産分割協議書を提出する際などには、担保提供の承諾書や遺産分割協議書に押印した印鑑証明書の提出が求められている。これらの印鑑証明書の添付が求められる手続きにおいては、本人証明性の厳格さの観点などから押印が残るとみられている。
また、書面に限定した手続きについても在り方を見直す。例えば、海外在住者の日本と外国での二重課税を避けるための「租税条約に関する届け出書」など、オンラインではなく書面を前提とする税務手続きがある。さらに、確定申告の際に領収書などをスキャナーで読み取り電子データとして紙に代わって保存する制度についても、改ざんを抑止する措置などを条件に、紙原本とデータを付き合わせる確認義務の要件緩和などが検討される。
かねてより日本経団連など経済団体から、テレワークの障害となる規制・制度等の見直し要望があり、規制改革推進会議が各府省に対して検討を依頼。その中で、財務省は、例えば、所得税・住民税関連手続きでは、法令上、税務書類には押印がなければならないとされており、押印がない場合、納税者等に押印を求めることとしているが、押印がない税務書類であっても受け付けは行っていると回答。現行でも柔軟な対応は行われているようだ。