2016-12-19
2017年度の与党税制改正大綱の内容が明らかになったが、大綱の目玉は、所得税の配偶者控除の見直しだ。納税者本人に配偶者控除38万円が満額適用される103万円以内にパート収入を抑える傾向がある、いわゆる「103万円の壁」を解消し、就業調整を意識しなくて済む仕組みの構築を目指す。もっともそのためには、税制だけでなく、社会保障制度や企業の配偶者手当などの面で総合的な取組みを進める必要があるとみている。 今回の改正では、就業調整をめぐる喫緊の課題に対応するため、所得税・個人住民税における現行の配偶者控除・配偶者特別控除を見直す。具体的には、配偶者控除を満額受けられる配偶者の年収上限を現行の103万円から150万円に引き上げる。この給与収入150万円という水準は、安倍内閣が目指している最低賃金の全国加重平均額である1000円の時給で1日6時間、週5日勤務した場合の年収(144万円)を上回るものだとしている。 また、現行制度と同様に、150万円を超えても世帯の手取り収入が逆転しないような仕組みを設ける。201万円以下までは段階的に縮小しつつも控除が受けられる仕組みとする。ただし、世帯主(夫)の年収には制限を設け、1220万円を超えると控除が受けられない。この改正は2018年分以後の所得税から適用されるが、財務省の試算では、約300万世帯が減税となる一方、約100万世帯が増税になる見通しという。 大綱は、今回の配偶者控除等の見直しは個人所得課税改革の第一弾と位置付けている。今後の所得税改革の方向性として、「控除方式のあり方について検討を進める」と明記。現行の「所得控除方式」は高所得者ほど税軽減の効果が大きいことから、収入にかかわらず税負担の軽減額が一定となる「ゼロ税率方式」や「税額控除方式」の導入のほか、現行方式を維持しつつ高所得者の税負担の軽減額が逓減・消失する仕組みの導入を挙げている。 一方で、今回の改正で「103万円の壁」がなくなるとしても、社会保険料の徴収が始まる「130万円の壁」は残り、2016年10月から大企業のパートは社会保険加入の基準が106万円に下がった。また、「103万円」という水準が企業の配偶者手当制度等の支給基準に援用されていることがある。大綱は、企業に対し「今回の見直しを踏まえ、労使の真摯な話し合いの下、就業調整問題を解消する観点からの見直し」を強く要請している。