2020-11-11
年末調整の時期が近付いてきたが、今回は改正事項が多く、控除誤りのない年末調整のためには改正内容を確認することが大切だ。2020年の年末調整に影響する主な税制改正には、(1)給与所得控除の引下げ、(2)基礎控除額の引上げ、(3)所得金額調整控除の創設、(4)配偶者・扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し、の4つがある。
給与所得控除額は、2020年1月以降は一律10万円ずつ引き下げられている。同時に、上限額の適用される収入金額が「1000万円超」から「850万円超」に引き下げられ、かつ、控除上限額が220万円から195万円に引き下げられている。給与所得控除額が引き下げられているが、「基礎控除の引上げ」により相殺され、多くの人には影響はない。ただ、年収が850万円を超えると、10万円以上の控除額の引下げとなるので、実質的な増税となる。
次に、(2)の基礎控除額は、収入が給与収入のみの場合、合計所得金額2400万円以下の場合、48万円、同2400万円超2450万円以下の場合、32万円、同2450万円超2500万円以下の場合、16万円となり、合計所得金額2500万円超えると適用はなしになる。基礎控除の判定にあたり、昨年までは配偶者(特別)控除を受けるときのみ申告が必要だった「給与以外の収入」について、ほぼ全ての納税者について申告が必要になる。
(3)の所得金額調整控除の創設は、年収850万円超は実質増税となるが、子育てや介護世帯の税負担を増やさないように、同制度が創設された。所得金額調整控除は、年収850万円を超える増税対象者で、かつ、給与所得者本人が特別障害者、扶養親族が23歳未満、同一生計配偶者が特別障害者あるいは扶養親族が特別障害者のいずれかに該当する場合に受けられる。控除額は「(年収(1000万円が上限)-850万円)×10%」で計算する。
年収は1000万円が上限なので、年収1000万円以上では控除額は一律15万円となる。また、同一生計配偶者または扶養親族については、自分以外の所得者が控除対象としている場合も対象にできる。例えば、共働き世帯で、夫の扶養控除対象としている23歳未満の子供がいる場合、妻も所得金額調整控除の対象となる。なお、年末調整でこの所得控除を受ける場合には、別途「所得金額調整控除申告書」の提出が必要になる予定だ。
(4)の配偶者・扶養親族等の合計所得金額要件等の見直しについては、「給与所得控除額の引下げ」と「基礎控除の引上げ」に伴う、各種所得控除を受けるための扶養親族等の所得要件が引き上げられているが、収入が給与のみの場合は、特に影響はない。