電子帳簿保存制度、事前承認の廃止など抜本的見直し

電子帳簿保存法では、7年間(一部の書類は10年間)の保存が義務づけられている国税関係の帳簿書類は、これまで紙での保存が“当たり前”だったが、税務署長の承認を受ければ電子データとして保存できるようになっている。2021年度税制改正においては、経済社会のデジタル化を踏まえ、経理電子化による生産性向上、テレワーク推進、記帳水準向上及び適正な課税の実現等の観点から、電子帳簿保存制度を抜本的に見直す。

システム要件・事前手続き・内部統制要件の三位一体の見直しにより、利用促進が大いに期待される。帳簿書類の電子保存のシステム要件では、現行は(1)PC等の閲覧用のモニター、説明書の備付け、(2)検索機能、訂正削除履歴の確保などがあるが、最低限(1)を満たせば、電子保存が可能になり、(1)(2)の両方を満たせば、税制上のメリット(過少申告加算税の額から申告漏れに係る税額の5%相当額を控除等)がある。

スキャナ保存制度のシステム要件では、検索機能の確保や訂正削除履歴の確保などがあるが、検索要件は、日付・金額・取引先のみに簡素化される(帳簿書類の電子保存も同様)。また、帳簿書類の電子保存とともに、電子保存開始前に必要だった税務署長による事前承認が廃止される。そのほか、電子取引のデータ保存義務でも同様に検索要件が簡素化され、売上高1000万円以下の事業者は全ての検索要件が不要になる。

内部統制要件では、スキャナ保存特有の要件であるタイムスタンプ付与までの期限が3日以内から最長約2ヵ月以内までに緩和される。また、保存後の社内での原本とデータの突合作業である定期検査実施までは原本の廃棄ができなかったが、スキャナ後すぐに原本を廃棄できるようになる。そのほか、2名以上での事務処理という相互けん制要件を廃止して1名での事務処理が可能になり、書類への自書要件も廃止し、自書が不要になる。

このように、特にスキャナ保存導入のボトルネックだった厳しい内部統制要件が抜本的に見直され、2020年3月時点で承認件数が約4000件に過ぎなかったスキャナ保存が進展して、ペーパレス化の一層の推進が注目されている。ちなみに、帳簿書類の電子保存の承認件数は、2020年3月時点で約27万件と堅調に増加しているが、中小企業や個人事業者の利用は低迷しており、今回の抜本的な見直しにより、利用促進が大いに期待されるところだ。