所得拡大促進税制、雇用を増加させる企業を下支え

所得拡大促進税制が2021年度税制改正において見直される。所得拡大促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度。見直しの背景には、新型コロナウイルスにより、中小企業の経営環境の悪化が続いており、賃上げはおろか、雇用の維持への懸念も広がっている状況がある。

そのため、賃上げだけでなく、雇用を増加させる企業を下支えする観点から、適用要件のうち、(1)継続雇用者給与等支給額の1.5%以上増加という要件を、「雇用者給与等支給額」が1.5%以上増加という要件に見直した上で、適用期限を2年延長する。新規雇用者給与等支給額が対前年度2%以上、全雇用者給与等支給額が前年を上回れば、新規雇用者給与等支給額の15%の税額控除となるわけだ。

さらに、所得拡大促進税制には、税額控除率が25%となる上乗せ要件があるが、このうち、(2)継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が1.5%以上との要件を、「雇用者給与等支給額」の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が1.5%以上との要件に見直す。上記の(1)及び(2)の要件を判定する場合には、雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除しないこととする。

また、税額控除率を乗ずる基礎となる雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額は、雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除して計算した金額を上限とするとされている。所得拡大促進税制は、現行制度が「既存社員の賃上げ」に重点を置いた内容となっているが、来年以降は「新規雇用者給与」の増加が対象となる。雇用情勢の悪化に鑑み、賃上げから雇用拡大を重視した形へと制度を修正する。