2019年分の国外財産調書、6.9%増の約1万人が提出

近年、国外財産の保有が増加傾向にあるなか、国外財産に係る所得税や相続税の課税の適正化が喫緊の課題となっていることから、納税者本人から国外財産の保有について申告を求める仕組みとして、2012年度税制改正において国外財産調書の提出制度が創設され、2014年1月から施行された(初回の調書は2013年分)。国税庁はこのほど、国外財産調書制度創設後7年目となる2019年分の国外財産調書の提出状況を公表した。

それによると、2019年分(2019年12月31日における国外財産の保有状況を記載した)国外財産調書は、昨年4月16日を期限に提出されているが、提出件数は前年比6.9%増の1万652件、その総財産額は同9.2%増の4兆2554億円とともに6年連続で増加した。局別に提出件数をみると、「東京局」6771件(構成比63.6%)、「大阪局」1582件(同14.9%)、「名古屋局」774件(同7.3%)の順に多く、この都市局3局で全体の8割半ばを占めた。

総財産額でみると、「東京局」は3兆953億円にのぼり、全体の72.7%を占め、東京・大阪(14.1%)・名古屋(5.2%)の3局で9割強を占める。また、財産の種類別総額では、「有価証券」が56.9%を占める2兆4232億円で最多、「預貯金」5948億円(構成比14.0%)、「建物」4510億円(同10.6%)、「貸付金」1957億円(同4.6%)、「土地」1536億円(同3.6%)のほか、「それ以外の財産」が4375億円(同10.3%)となっている。

国外財産調書提出制度は、その年の12月31日においてその価額の合計額が5千万円を超える国外財産を有する居住者は、翌年3月15日までにその財産の種類や数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、税務署長に提出しなければならないというもの。個人を対象に2014年から義務化されたが、国外財産調書は、自主的に自己の情報を記載し提出するものであることから、インセンティブ措置等が設けられている。

具体的には、(1)調書を期限内に提出した場合に、記載された国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても加算税を軽減(▲5%)、(2)調書の提出がない場合又は提出された調書に国外財産の記載がない場合に、その国外財産に関して所得税の申告漏れが生じたときには、加算税を加重(+5%)する。また、2015年からは故意の不提出や虚偽記載に対して1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される。

国外財産調書の提出者及び提出を要すると見込まれる者に対する2019事務年度(2019年7月~2020年6月)における所得税及び相続税の実地調査の結果、上記(1)の軽減措置を適用したのは214件、増差所得等金額は51億2588万円、(2)の加重措置を適用した件数は475件、同112億8924万円だった。なお、2020年度税制改正においては、(2)の加重措置の対象に相続税についても適用されることになった。

この件については↓
https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0021001-018.pdf