2021-03-19
火災保険は、一戸建てやマンション、ビルなどの“建物”と、建物の中にある家具や什器などの“動産“を補償するが、火災保険の契約者と建物の所有者(被保険者)が違う場合、火災が発生した際、保険金は誰に支払われるのだろうか。通常は、建物や家財などの所有者(被保険者)に保険金を受け取る権利があるので、保険金は契約者ではなく所有者に支払われる。ただし、質権設定された契約など被保険者へ支払いできない場合もある。
それは、住宅ローンの借入をする際に金融機関等に対して火災保険の保険金の権利を担保として提供しているからだ。そのため、被保険者ではなく質権者(金融機関等)に保険金の請求権が移るので、保険金は質権者に支払われることになる。火災保険の契約者は、保険会社に契約の申込みをして保険料を支払う契約の当事者である一方、被保険者は、保険の補償を受ける保険の対象となる建物の所有者だ。
被保険者は、契約者と同一の場合も、別人の場合もある。別人であるケースとして、親所有の建物に子供が保険料を負担して火災保険に加入している場合などがある。この場合、保険料の支払者と保険金の受取人が異なるので、火災保険金を受け取った人に所得税や贈与税の課税問題が出てくるが、火災保険は火災や自然災害などで受けた損害を穴埋めするのが役割なので、保険金の受取りによって、利益は生じないことから非課税となる。
ところで、火災保険は掛捨てが一般的だが、積立型の火災保険もある。満期になれば満期返戻金が支払われるが、この満期返戻金は、満期返戻金の受取人が契約者と同一である場合は、原則として一時所得として扱われ、他の一時所得と合算して課税を受ける。また、受取人と契約者が異なる場合は、受取人に贈与税が課税される。契約者と受取人が同一であるかどうかで課せられる税金が違うことになる。
また、注意事項として、契約者(保険料の負担者)が保険期間中に死亡した場合がある。掛け捨てタイプで保険料を一時払いで払う火災保険や積立式の火災保険を相続したときは、その契約に関する権利が相続税の課税対象となり、権利の評価額は相続開始時の解約返戻金相当額となる。保険期間中に相続が発生した場合には、未経過分の保険料等を相続財産に加算されるので、忘れないように留意が必要だ。