法人税法上、役員のうち使用人兼務役員になれない人

使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいう。使用人兼務役員は、「使用人分給料」は、定期同額給与の制約を受けないことや、賞与等の支給が可能なこと、雇用保険の加入や有給休暇の付与も可能などのメリットがあるが、法人税法上、「職制上の地位を有する役員」は、使用人兼務役員とならないとしてその要件を厳しく定めている。

具体的には、(1)代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人、(2)副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員、(3)合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員、(4)取締役(委員会設置会社の取締役に限る)、会計参与及び監査役並びに監事、(5)(1)から(4)までのほか、同族会社の役員のうち所有割合によって判定した結果、所有割合の判定要件を全て満たす役員が挙げられている。

(1)は、そもそも使用人は、代表取締役の指揮・監督に服するべき立場にあるため、同一人物がその相矛盾する地位を同時に有することはあり得ないため。(2)は、副社長などは、その職制上の地位により、表見代表として私法上の責任を負っているとされているため、(1)の代表取締役等と同様に、使用人を兼務できないこととされている。CEOやCFOなどの地位の者も、この(2)に分類されることになると思われる。

(2)については、定款の規定又は総会もしくは取締役会の決議により、会社の内部組織上において明確にその地位が付与された役員をいう。したがって、単なる通称又は自称専務等のように、実態は単なる平取締役であるような者は該当しない。次に、(3)の者も代表権を有する者になるため、(1)と同様の趣旨から、使用人を兼務できない。(4)の者は、会社法において使用人の兼務を認められていない者だ。

(5)に関しては、同族会社のオーナー家の者は、常に経営の中枢にあると認識されているため、その勤務実態にかかわらず、持株割合等の形式基準を満たしてしまうと、使用人兼務役員にはなれない。なお、この判定においては、判定対象者が直接株式を保有しているかどうかは要件とされていない。したがって、オーナー社長の奥さんは、本人が株式を全く保有していない場合であっても、使用人兼務役員にはなれないことになる。