納税管理人、税務当局からの選任・届出の要請可能に

2021年度税制改正で納税管理人制度が改正された。納税管理人制度とは、納税者が日本に住所等又は本店等を有せず、又は有しないこととなる場合で、納税申告書の提出など国税に関する事項の処理の必要があるときに、納税管理人を選任しなければならない制度だ。例えば、転勤や移住などで日本に住所を有しなくなった人が、日本国内で申告・納税する必要がある場合に、納税管理人に申告書の提出などを代わり行ってもらうことになる。

海外移住や1年以上の予定で海外転勤する者などの非居住者や日本に拠点を有しない外国法人は原則日本での納税義務はないが、非居住者や外国法人において、日本で発生した一定の所得等がある場合は、日本で課税される。例えば、非居住者が日本国内に賃貸不動産を有し、不動産所得を得ている場合には、非居住者は納税管理人を選任する義務があり、納税管理人は税務署からの通知書の受領、確定申告書の提出や国税の納付等を行う。

今回の改正では、納税管理人を選任すべき納税者は税務署に届出を行う必要があるが、この届出がない場合、税務当局はその納税者に対して、納税管理人に処理させるべき事項を特定事項として明示した上で、納税管理人の選任・届出をするよう求めることができるとされた。また、この特定事項の処理につき便宜を有し、国内に住所又は居所を有する国内便宜者に対して、その納税者の納税管理人となることを求めることができる。

納税管理人を選任すべき納税者が税務当局からの納税管理人の選任の要請に応じず、納税管理人の届出をしなかった場合には、税務当局は納税管理人の受任を要請した国内便宜者のうち、一定の国内関連者を特定納税管理人として指定することができるとされている。特定納税管理人に指定される一定の国内関連者とは、納税者が個人の場合には納税者と生計を一にする成人以上の親族とされている。

納税者が法人の場合には、納税者が法人の発行済株式等の50%以上を保有し又は保有される関係その他特殊の関係にある法人や、納税者の役員又はその役員と生計を一にする成人以上の親族とされている。さらに納税者が個人及び法人に共通するものとしては、納税者の国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実について、その納税者との間の契約により密接な関係を有する者などが対象とされている。

なお、特定納税管理人の指定については、不服申立て及び取消訴訟等が可能とされている。また、この改正は、2022年1月1日以後に実施される要請及び指定について適用される。