個人事業主が事業用固定資産を売却した場合の取扱い

個人事業主が「事業用固定資産」を売却すれば、もちろん確定申告の際に申告が必要になるが、注意したいのは所得区分だ。法人の場合は、売却益を「固定資産売却益」に計上するだけだが、一方、個人事業主の場合は、たとえその固定資産が事業用資産の場合であっても、原則、事業所得ではなく「譲渡所得」となるのがポイントだ。譲渡所得の計算式は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額50万円」となる。

ただし、使用期間が1年未満の減価償却資産や取得価額が10万円未満の減価償却資産、取得価額が20万円未満で取得の時に一括償却資産の必要経費算入の規定の適用を受けたものなどは事業所得となる。基本的には動産の譲渡による所得は総合課税での譲渡所得になるが、生活に通常必要な動産の譲渡には課税されない。また、事業用の車を売却した場合などは、プライベートで使用していた部分を考慮する必要がある。

例えば、その売却した車の事業専用割合を70%で必要経費に算入していたケースでは、売却価格の70%が譲渡所得の対象となる。30%に対しては生活用動産として課税はされないが、譲渡損失が出たとしても、その損失はないものとみなされ、損益通算に使うことができない。譲渡所得の取得費の計算は、取得価格から減価償却費累計額を控除した金額に事業専用割合の70%を乗じた金額になる。

ところで、消費税の課税事業者であれば消費税の取扱いがある。消費税の課税対象となる取引は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等なので、上記の例であれば、事業専用割合70%部分は消費税法上の課税売上になる。そして、譲渡所得を計算する際の消費税の取扱いについては、その資産をその用に供していた事業所得を生ずべき業務に係る取引について選択していた消費税等の経理処理と同じ経理処理を行う。

つまり、事業所得について税抜経理方式を選択していた場合には譲渡所得の金額を計算するときも税抜経理方式で行う。例えば、車を税込110万円で売却した場合は、事業専用割合70%の77万円の税抜価格である70万円が譲渡所得計算上の譲渡価格となり、70万円が消費税法上の課税売上となる。なお、譲渡所得には特別控除の50万円が適用されるので、車を売却しても課税対象となる金額まで譲渡所得が発生することは少ないとみられる。