2020年度査察、告発分の脱税総額は過去最少の69億円

いわゆるマルサと呼ばれる査察は、脱税でも特に大口・悪質なものが強制調査され検察当局に告発されて刑事罰の対象となる。国税庁が17日に公表した2020年度査察白書によると、同年度に査察で摘発した脱税事件は前年度より52件少ない113件で、その脱税総額は前年度を24.5%下回る約91億円だった。今年3月までの1年間(2020年度)に、全国の国税局が査察に着手した件数は111件と、前年度(150件)を39件下回った。

継続事案を含む113件(前年度165件)を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、うち73.5%に当たる83件(同116件)を検察庁に告発。この告発率73.5%は前年度を3.2ポイント上回り、2008年度以来の高水準となった。2020年度は、消費税の輸出免税制度を利用した消費税受還付事案を9件告発、自己の所得を秘匿し申告を行わない無申告ほ脱事案を13件告発、国際事案でも過去5年で最多の27件の告発を行っている。

近年、査察における大型事案は減少傾向にあり、2020年度の脱税総額90億5000万円は、ピークの1988年度(約714億円)の約13%にまで減少している。1件当たり平均の脱税額は8000万円で、ここ5年は1億円を下回っている。告発分の脱税総額は前年度を25.3%下回る69億2600万円となり、統計が残る1972年度以降、過去最少となった。1件当たり平均の脱税額は8300万円となっている。

告発分を税目別にみると、「法人税」が前年度から9件減の55件で全体の約66%を、脱税総額でも約38億円で約55%をそれぞれ占めた。「所得税」は同9件減の8件(脱税総額約8.9億円)、「消費税」は同14件減の18件(同約20.3億円)、「源泉所得税」は同1件減の2件(同約1.8億円)、「相続税」は0件(前年度0件)。消費税の告発件数のうち9件は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)のものだった。

告発件数の多かった業種は、「不動産業」が26件で前年度に引き続きトップ、次いで「建設業」が15件、「クラブ・バー」が4件で続いた。なお、2020年度の査察では、生活保護受給者に宿泊施設を提供する貧困ビジネス事案や北海道ニセコ地区における不動産業者の法人税ほ脱事案などを告発し、時流に即した社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対しても積極的に取り組んでいる。

同査察白書の概要は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/sasatsu/r02_sasatsu.pdf