日税連、インボイス方式を見直し導入時期延期を要望

日本税理士会連合会(日税連)は、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができると税理士法に規定されており、この規定に基づき、税制改正に関する建議書を毎年取りまとめている。2022年度税制改正に関する建議書においては、重要建議項目4項目を始め、所得税や中小法人税制など9分野33項目に及ぶ税制改正建議を盛り込んだ。

重要建議項目は、(1)適格請求書等保存方式を見直すとともに、その導入時期を延期すること、(2)消費税の非課税取引の範囲を見直すこと、(3)基礎的な人的控除のあり方を見直すとともに、所得計算上の控除から基礎控除へのシフトを進めること、(4)「災害損失控除」を創設するとともに、相続時精算課税制度における受贈財産が災害により損失を受けた場合の救済措置を設けること、の4項目。

適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)については、事務負担に与える影響や市場取引に与える影響の問題点に対して必要な措置を検討することを求めた。また、少なくとも、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の制約が概ね解消され、簡易で安価な電子インボイス制度が整備されるなど中小企業者に対する負担軽減措置が講じられるまでの間は、導入を延期すべきであるとした。

事務負担に与える影響について、適格請求書等保存方式においては、取引の都度、適格請求書等の有無の確認を行う必要があり、この確認は少額取引(3万円未満)についても一定の取引以外の取引については必要となると指摘。これは、事業者及び税務官公署の事務に過度な負担を生じさせることから、行政手続コスト削減の方向性に逆行することのないように見直すことを求めている。

また、市場取引に与える影響について、免税事業者は適格請求書等を発行できないため、対事業者取引から排除や不当な値下げを強いられるおそれがあるとして、あえて課税事業者になることを選択することが考えられるが、消費税相当額の転嫁が困難なケースもあり、廃業を余儀なくされる事業者が増える可能性があることにも留意すべきと指摘。見直しにあたっては、事業者の負担と徴税コスト等を考慮し、抜本的に再検討すべきとした。

消費税の非課税取引の範囲については、収受した消費税相当額と支出した消費税相当額の差額を納付・還付する簡素な制度であるべきと指摘。消費税法に掲げられる非課税取引には、「税の性格から課税対象になじまないもの」と「社会政策的な配慮に基づくもの」があり、後者は、課税取引とし、課税標準及び仕入税額控除の計算過程に取り込み、小規模事業者判定における売上高基準にも反映させ、計算をできるだけ平易にすべきとした。

日税連の「2022年度税制改正に関する建議書」は↓
https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/nichizeiren/proposal/taxation/tax_reform/kengisyo-R4.pdf