2021-07-21
企業によっては、残業や休日出勤をする従業員に対して食事を手配しないで、従業員自身に食事を調達してもらい後日実費精算するところも少なくない。この場合、税務上の取扱いはどうなるのだろうか。所得税法基本通達36-24では、使用者が勤務時間外の勤務をさせた場合に支給する食事については、実費弁償的なものとして取り扱われることから給与として課税しなくても差し支えないとされている。
会社が食事を現物で支給するのではなく、従業員が自分で購入等した食事代を領収書等により実費精算した際に会社から支払われる金銭が給与課税の対象になるかを現実に即して考えると、領収書等で実費精算している場合は、会社が直接支払いをしてはいないが、実態として会社が直接支払う現物支給と同視できることから給与課税されない。単に従業員が立替払いをしたことになり、その場合、福利厚生費として処理できる。
また、在宅勤務で残業した場合でも、従業員が食事を購入するなどして、実費精算した場合に支払われる金銭の取扱いも、オフィス勤務と同様になる。所基通では、通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行った者についての取扱いなので、在宅勤務もオフィス勤務と同様に福利厚生費として計上できる。ただし、適切な時間管理や、通常の勤務時間と勤務時間外の線引きが適正にできていることが前提となる。
したがって、在宅勤務の場合は、時間管理をどのようにするかルールを決める必要がある。オフィス勤務の場合の勤怠管理はタイムカード等で管理できるが、在宅勤務の出勤時と退勤時及び残業等の勤務時間外の管理方法について明確な規定を作成しておく必要があるわけだ。また、残業食事代の金額には特に税務上の定めはなく、出前やコンビニなどの弁当など社会通念上相当な額であれば良いとされている。
なお、残業する社員や在宅勤務者に食事ではなく、「食事手当」といった形で現金を支給した場合には、従業員の給与として源泉徴収の対象となるので要注意だ。ただし、深夜勤務の従業員に現金を支給した場合は、(1)夜食を支給することが著しく困難、(2)通常の給与に加算して支給、(3)勤務1回ごとに定額の支給、(4)1回の支給額が300円以下(消費税抜き価格)、の4つの条件を満たした場合には福利厚生費として計上できる。