2021-07-27
総務省は7月21日、広島県廿日市市から協議のあった法定外普通税の新設について、同日付けで武田良太総務相が同意したことを発表した。新設される廿日市市の「宮島訪問税」は、世界遺産・厳島神社のある宮島を訪れる観光客らを対象に、観光客らが船舶により宮島町の区域へ訪問するごとに1人1回100円(1年分を一時に納付する場合は、訪問者1人1年ごとに500円)を課税する。2023年度中に徴収が始まる予定だ。
廿日市市では、新税の導入の背景について、厳しい財政状況の中での安定的な財源の確保の必要性を挙げている。同市の人口は、国の機関の推計によると、2045年には約9.7千人減少し、約10.5万人になるとされている。今後、市全体で生産年齢人口は約1.1万人減少し、市税は減少する見込み。同時に、老年人口は約3.5万人増加し、高齢化の進行による扶助費は増加する見込み。一方で、宮島への来島者数は増加傾向にある。
ところが、宮島での宿泊者は来島者の1割にも満たない状況となっており、他の自治体のように宿泊税は有効ではないという。多くの来訪によって発生・増幅する行政需要は、多くを市民全員が負担しているが、将来にわたって安定的、継続的に対応するためには、来訪者にもその一部を負担してもらう構造に切り替える必要があるとして、法定外普通税の「宮島訪問税」を導入すると市は説明している。
課税対象は宮島を訪れる観光客等だが、島民や未就学児、通勤・通学者、引率者等を含む修学旅行者のほか、知的障がい者、精神障がい者、身体障がい者などは課税免除とする。徴収方法は、フェリーなどの旅客船で来島する場合は運賃に上乗せし、プレジャーボートなどの個人船で来島する場合は桟橋使用料を徴収する際に徴収する「特別徴収」や、桟橋を利用せず、自然海岸に個人船で乗り付ける場合は市に「申告納付」してもらう。
廿日市市では、「宮島訪問税」の導入により、初年度約2億円、平年度約3億円の税収を見込んでいる。また、徴収開始については、2023年度を目途に、新型コロナウイルス感染症の状況を考慮した上で条例施行を予定している。