2021-08-02
現行民法では、書面の受取証書の交付請求権、交付義務のみを規定している。つまり、受取証書(いわゆる領収書)の交付請求として規定しているのは書面のみだが、去る5月12日に成立したデジタル整備法の一部である民法改正により、本年9月1日から、紙の受取証書の請求に代えて、その内容を記録した電子データ(電子的な受取証書)の提供を請求することができるようになった。
社会全体として在宅勤務が推奨されているなか、主に勤務先での税務処理等の観点から必要とされる受取証書の受領・保管等の事務を行うためだけに出社を余儀なくされたという声などがあったことが背景にあるようだ。一方、受取証書の提供者側には、紙代や印刷代等の経費削減、レジの混雑緩和、書類として管理する手間や管理スペースの削減などのメリットが考えられている。
加えて、今後ますます取引実務のデジタル化が進むと考えられることなどから、電子データの提供の請求ができるよう措置が講じられたものだ。今回の改正により、支払者側は紙の受取証書又は電子的な受取証書のいずれかの請求を選択することになるが、小売店のシステムが未整備の場合や不相当な負担となる場合などのように、事業者が電子的な受取証書への対応が困難なときには紙での対応も可能だ。
内閣府と法務省では、実務の参考とするため、この電子的な受取証書(新設された民放第486条第2項関連)についてのQ&Aを公表しており、税務関連の設問として、「民法上の受取証書」と「消費税の仕入税額控除の適用を受けるために保存が必要となる請求書等」(「区分記載請求書等」)、及び2023年10月から導入されるインボイス制度の「適格請求書」との関係性を取り上げている。
それによると、民法上の受取証書と区分記載請求書等では、必要とされる記載事項が異なるが、民法上の受取証書に区分記載請求書等として必要事項が記載されていれば、これを保存することで、消費税の仕入税額控除の適用を受けることができる。また、適格請求書は、区分記載請求書等に一定の記載事項を追加したものなので、民法上の受取証書に適格請求書として必要事項が記載されていれば、これを適格請求書とすることも可能としている。
このため、電子的な受取証書についても、消費税の仕入税額控除の適用のために保存が求められるものとして活用の際には、区分記載請求書等として必要な記載事項を満たす必要があるとした。なお、区分記載請求書等とは、請求書や領収書などで、(1)請求書発行者の氏名又は名称、(2)取引年月日、(3)取引内容(軽減税率の品目である旨)、(4)税率ごとに区分・合計した税込対価の額、(5)請求書受領者の氏名又は名称、の情報が必要とされる。
電子的な受取証書についてのQ&Aは↓
http://www.moj.go.jp/content/001352519.pdf