2021-08-26
個人事業者のうち、その年に係る基準期間における課税売上高が1000万円以下である者については、その年中に国内において行った課税資産の譲渡等について、原則、消費税の納税義務が免除される。ただし、相続があった場合の納税義務の免除については、別途特例規定が設けられている。例えば、年間1200万円の不動産収入があった被相続人が2020年9月30日に亡くなり、兄弟で相続したケースでみてみよう。
不動産は兄が相続することになったが、兄は元々自営業を営んでおり、事業収入は年間800万円で消費税の免税事業者だった。兄の基準期間(2018年)の課税売上高は1000万円以下なので、通常の場合、2020年は消費税の免税事業者になるのだが、相続があった場合は少し違ってくる。相続があった年の翌年又は翌々年というのは、被相続人と相続人の基準期間の課税売上高を合計して1000万円を超えているかどうかで判定する。
相続があった年の基準期間の課税売上高が1000万円以下の相続人が、基準期間の課税売上高が1000万円超の被相続人の事業を承継した場合、その相続人の相続があった日の翌日から12月31日までの間は、消費税納税義務は免除されない。被相続人は2020年9月30日に亡くなったので、兄は2020年10月1日から12月31日の期間は消費税の納税義務があったということになる。ただし、2人以上の相続人がいるときには取扱いが異なる。
相続財産の分割が実行されるまでの間は被相続人の事業を承継する相続人が確定していないことから、各相続人が共同で事業を承継したものとして取り扱うこととされている。この場合、各相続人の基準期間における課税売上高は被相続人の基準期間における課税売上高に法定相続割合を乗じた金額とされている。それは、兄の法定相続割合は1/2なので、被相続人の基準期間における課税売上高1200万円×1/2=600万円となる。
したがって、1000万円以下であり、兄自身の基準期間の課税売上高も800万円なので、2020年は免税事業者となる。ただし、相続があった年の翌年又は翌々年は、被相続人と相続人の基準期間の課税売上高を合計するので、被相続人の1200万円×1/2=600万円と兄自身の800万円を合計した1400万円が基準期間における課税売上高になり、1000万円超となるため2021年は消費税の課税事業者となるので注意が必要だ。
なお、上記の「相続があった年の基準期間における課税売上高が1000万円以下の相続人」には、相続のあった日において現に事業を行っている相続人はもちろん、事業を行っていない相続人も含まれるので注意を要する。