2021-10-01
夫婦が離婚したときに相手方の請求に基づき一方の人が相手方に財産を渡すことを財産分与というが、離婚に伴う財産分与は、民法768条⦅財産分与⦆に基づくもので、贈与税の課税原因である民法549条⦅贈与⦆とは異なる。つまり、離婚に伴う財産分与は夫婦の財産関係の清算、生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたもので、贈与とは考えないので原則として贈与税はかからない。
ただし、離婚に伴う財産分与であっても、分与された財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額などを考慮しても多すぎる場合には、その多すぎる部分は贈与とされ贈与税がかかるし、離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合には、受け取った財産すべてに贈与税がかかる。財産分与の金額が、社会通念上多すぎる場合や租税回避行為と認められるような場合は贈与税の課税対象となる可能性がある。
また、財産分与が土地や建物などの場合、分与した人に譲渡所得課税が行われる点には注意が必要だ。この場合、分与時の土地や建物などの時価相当額が譲渡所得の収入金額になる。そこで、不動産の取得価額と譲渡(財産分与)の費用の合計よりも譲渡時点の時価のほうが高ければ、その差額(譲渡所得)に譲渡所得税がかかる。したがって、取得時よりも資産の価値が下落していれば課税されることはない。
ちなみに、譲渡所得税の対象となるのは、土地や建物の不動産のほかに、株式や債券などの有価証券、高額な美術品、ゴルフ会員権など、主に所得税法上で資産と認められている財産だ。そのため、現金を譲渡する際には譲渡所得税はかからない。また、分与を受けた人は、分与を受けた日にその時の時価相当額で土地や建物を取得したことになるので、将来の譲渡時の長期・短期判定は、財産分与を受けた日を基に行うことになる。
なお、居住家屋を売却する場合、「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」があるが、このマイホーム特例は、売手と買手が親子や夫婦など特別な関係でないことが要件のひとつになっている。そのため、離婚前に特例を適用することはできないが、離婚成立後であって、その他の要件を満たしていれば特例を利用できる。したがって、マイホーム特例を受けるためには、離婚後に財産分与を行う必要がある。