無申告者の1人平均申告漏れは2565万円と高額

無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすことになるため、的確かつ厳格な対応が求められる。無申告者は、その存在自体の把握が難しいことから、国税当局は、有効な資料情報の収集や活用を図り、積極的に調査を実施している。国税庁が今年6月までの1年間(2020事務年度)に実施した高額・悪質と見込まれた無申告者に対する実地調査は2993件(前事務年度7328件)行われた。

実地調査(特別・一般)の結果、申告漏れ所得金額の総額は768億円(前事務年度1583億円)把握。追徴税額は、総額で87億円(同174億円)、1件当たりでは292万円(同237万円)だった。2020事務年度は実地調査(特別・一般)全体が1万8713件行われているから、全体の約16%が無申告者に対する調査に充てられ、実地調査(同)全体の申告漏れ所得金額2770億円の約28%が無申告者に係るものだったことになる。

1件当たりの申告漏れ所得金額は2565万円となり、前事務年度の2160万円から18.8%増加し、実地調査(特別・一般)全体の1件当たり申告漏れ所得金額1480万円の約1.7倍と高額だ。しかも、前事務年度に比べ調査件数はコロナ禍の影響で59.2%も減少した中での数字である。こうした調査結果からいえることは、結構高額な所得がありながら、国税当局にはばれまいと高をくくって申告しない納税者がいかに多いかということだろう。

また、消費税の無申告者に対しては、2020事務年度において実地調査(特別・一般)3294件(前事務年度8329件)が行われた結果、追徴税額は75億円、1件当たりでは227万円となった。同事務年度の消費税に係る実地調査(同)全体は9301件行われており、全体の約35%が無申告者に対する調査に充てられ、消費税の実地調査(同)全体の追徴税額127億円の約59%が無申告者に係るものだった。

調査事例では、実質的に支配する法人から貸付金返済の名目で借名口座に振り込み、虚偽の外形を作っていた事案が報告されている。プログラマーAは、FXや暗号資産に関する自動売買プログラムや分析ツール等の商材ソフトの開発販売を行っていたが、部内資料や投書等の情報から、事業所得の無申告が把握された。Aに対しては、所得税3年分の申告漏れ所得金額約2億100万円について、追徴税額(重加算税含む)約1億900万円が課された。