法人消費税調査、コロナ禍で件数減も追徴税額は増加

消費税還付申告法人に対する税務調査が大きな成果を上げている。これは、国税庁が先日公表した2020事務年度の法人税等の調査事績により明らかとなったもの。コロナの影響により調査事務量の減少等から、法人税調査件数が大幅減少傾向にあるなか、消費税還付申告法人への追徴税額が前年を上回った。国税庁のまとめによると、2020事務年度に実施した法人消費税の実地調査は2万5千件(対前年比▲69.8%)だった。

このうち1万6千件(対前年比▲63.2%)から何らかの非違が見つかり、729億円(同0.9%増)を追徴している。消費税還付申告法人についてみると、3066件(同▲47.5%)に実地調査を実施し、このうち510件の不正を含む2073件(同▲37.8%)から非違が見つかった。これによる追徴税額は前年比3.0%増の219億円(うち不正還付は34億円)と増加。調査1件あたりの追徴税額は同96.2%増の714万円にのぼる。

以上のように、法人消費税の実地調査は、新型コロナ感染症の影響で前年の3割程度にまで大きく減少したが、追徴税額は微増し、1件当たりの追徴税額は前年比約3倍増の297万円と大幅に増加。不正計算があった件数は同▲57.9%の5千件、その追徴税額も同▲11.6%の178億円だったが、不正1件当たりでは同110.1%増の331万円だった。これは、調査量が大きく制限されるなか、調査対象にはいつも以上の厳しい調査が行われたといえる。

消費税不正還付の主な手口は、国内で架空仕入れを計上するとともに、免税となる国外への売上を架空計上し、売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を控除するとマイナスになることを利用して還付を受けるもの。国税庁では、法人から税務署に提出された消費税還付申告書について、申告内容に応じて、還付事由の確認のため還付金の支払手続きを保留した上で厳正な審査を行い、行政指導や実地調査を行っていく方針だ。

調査事例では、輸出物品売上制度を悪用し、国内事業者に対する課税売上を免税売上に仮装していたものがある。ドラッグストアを複数店舗経営するA社は、消費税の還付金を不正に受領するため、自社とは全く無関係の外国人旅行者等のパスポートの写しを利用し、店頭で外国人旅行者に販売したように装って、免税売上に仮装していた。A社に対しては、3年分の消費税の不正還付について、重加算税を含む追徴税額4500万円が課されている。