相続税、実地調査1件の追徴課税は過去10年で最高

国税庁が、今年6月までの1年間(2020事務年度)において、資料情報等から申告額が過少と想定される事案や、申告義務がありながら無申告と思われるものなど5106件(前事務年度比▲52.0%)を実地調査した結果、うち87.6%に当たる4475件(同▲50.7%)から1785億円(同▲41.4%)の申告漏れ課税価格を把握したことが明らかになった。加算税66億円を含む482億円(同▲29.3%)を追徴課税した。

このように、2020事務年度においては、新型コロナ感染症の影響により、実地調査件数は大幅に減少したが、大口・悪質な不正が見込まれる事案を優先して調査した結果、実地調査1件当たりでは、申告漏れ課税価格が3496万円(前事務年度比22.0%増)と増加し、追徴税額は943万円(同47.3%増)となり、過去10年で最高となった。また、重加算税を賦課した件数は719件(同▲53.3%)で、その重加算税賦課対象額は319億円(同▲44.1%)。

実地調査を適切に実施する一方、文書、電話による連絡や来署依頼による面接により申告漏れ、計算誤り等がある申告を是正するなどの「簡易な接触」も積極的に取り組んだ。簡易な接触件数は1万3634件(前事務年度比57.9%増)、申告漏れ等の非違件数は3133件(同37.3%増)、申告漏れ課税価格は560億円(同31.1増)、追徴税額は65億円(同54.8%増)と、いずれも簡易な接触の事績を集計し始めた2016事務年度以降で最高となった。

一方、申告・納税義務があるのに申告しない無申告事案は、前事務年度より▲57.1%少ない462件の実地調査を行い、うち88.5%に当たる409件(前事務年度比▲55.6%)から455億円(同▲49.8%)の申告漏れ課税価格を把握し、61億円(同▲36.4%)を追徴課税した。1件当たりの申告漏れ課税価格は9848万円(同17.0%増)で、追徴税額は1328万円(同48.2%増)と、無申告事案に対する集計を始めた2009事務年度以降で最高となった。

また、海外資産関連事案についても、資料情報や相続人・被相続人の居住形態等から海外資産の相続が想定される事案などを積極的に調査。2020事務年度においては、551件(前事務年度比▲45.3%)の実地調査を行い、うち96件(同▲35.6%)から海外資産に係る申告漏れ課税価格34億円(同▲55.6%)を把握し、うち9億円が重加算税賦課対象となっている。非違1件当たりの申告漏れ課税価格は3579万円(同▲31.1%)だった。

2020事務年度の相続税の調査状況は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf