2022-01-06
2022年度税制改正の目玉の一つは企業の積極的な賃上げを促すための措置。賃上げ促進税制は、2021年度税制改正において、中小企業は所得拡大促進税制のままだが、大企業は人材確保等促進税制という名称に変わっている。今回の税制改正では、雇用者全体の給与総額の増額分を法人税額から差し引く控除率が、大企業で最大30%(現行20%)、中小企業で最大40%(同25%)に引き上げられる。
大企業の人材確保促進税制は、前年度からの継続雇用者の給与総額で判断する。前年度から3%以上増やせば、継続雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額から差し引く。増加割合が4%以上のときは10%上乗せし25%とする。さらに、教育訓練費を前年度から20%以上増やせば、税額控除率に5%加算し、この結果、大企業の控除率は最大30%となる。ただし、控除税額は、当期の法人税額の20%が上限となる(所得税も同様)。
中小企業における所得拡大促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を1.5%以上増加させた場合、その増加額の15%を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度。中小企業は、継続雇用者だけでなく新規雇用者も含む雇用者全体の給与総額が前年度より2.5%以上の場合は、税額控除率に15%を加算し30%となる。
さらに、教育訓練費を10%以上増やすと、控除率に10%が加算され、中小企業の控除率は最大40%となる。給与総額の増加率が1.5%以上2.5%未満で教育訓練費を10%以上増やした場合は、控除率は25%となる。控除税額の上限は、法人税額の20%。また、教育訓練費の上乗せ措置の適用を受ける場合には、大企業と同様、教育訓練費の明細を記載した書類の保存(現行:確定申告書等への添付)が必要とされる。
なお、大企業に対しては、賃上げ税制を拡充する一方で、賃上げや設備投資に消極的な場合はペナルティが設けられる。研究開発税制その他生産性の向上に関連する税額控除の規定を適用する要件に、継続雇用者給与等支給額が前年度から1%以上(2022年4月1日から2023年3月31日までの間は0.5%以上)とすることを加える。つまり、賃上げ率1%未満の大企業は、研究開発などの投資減税の優遇措置が停止されるわけだ。