2022-02-02
わが国の所得税は、納税者が自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算し納税するという申告納税制度を採っている。1年間に生じた所得金額を正しく計算し申告するためには、収入金額 や必要経費に関する日々の取引の状況を記帳し、取引に伴い作成・受領した書類を保存する必要がある。一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などで有利な取扱いが受けられる青色申告の制度がある。
青色申告の記帳は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記によることが原則だが、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっている。これらの帳簿及び書類などは、原則7年間保存とされているが、書類によっては5年間でよいものもある。5年間の保存でよい書類には、例えば、請求書、見積書、納品書、送り状などがある。
青色申告の特典のうち主なものには、まず「青色申告特別控除」がある。不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者で、これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付して法定申告期限内に提出している場合には、原則としてこれらの所得を通じて最高55万円を控除することとされている。
現金主義によることを選択している人は、55万円の青色申告特別控除を受けることはできない。2020年分以後の青色申告特別控除について、この55万円の青色申告特別控除を受けることができる人が、電子帳簿保存又はe-Taxによる電子申告を行っている場合は、65万円の青色申告特別控除が受けられる。また、上記以外の青色申告者については、不動産所得、事業所得及び山林所得 を通じて最高10万円を控除することとされている。
次に、「青色事業専従者給与」がある。青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に専ら従事している人に支払った給与は、事前に提出された届出書に記載された金額の範囲内で専従者の労務の対価として適正な金額であれば、必要経費に算入することができる。なお、青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれない。
そのほか、「純損失の繰越しと繰戻し」がある。事業所得などに損失(赤字)の金額がある場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除する。また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越しに代えて、その損失額を生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできる。