国税庁、2021年分確定申告を通じて記帳実態の把握へ

2022年度税制改正では、記帳義務の不履行及び特に悪質な納税者への対応を行うが、国税庁では、確定申告を通じて記帳実態の把握に動き出した模様だ。2021年分確定申告書B用をみると、収入金額等欄の「事業(営業等及び農業)」と「不動産」に、新たに区分欄が設けられている。この区分欄(不動産の場合は、区分2)には、2021年の記帳・帳簿の保存の状況について、以下の場合に応じて1~5の数字を記入することが求められている。

電子帳簿保存法の規定に基づき、税務署長の承認を受けて、総勘定元帳、仕訳帳等について電磁的記録等による備付け及び保存を行っている場合…1。会計ソフト等の電子計算機を使用して記帳している場合(1に該当する場合を除く)…2。総勘定元帳、仕訳帳等を備え付け、日々の取引を正規の簿記の原則(複式簿記)に従って記帳している場合(1及び2に該当する場合を除く)…3。

さらに、日々の取引を正規の簿記の原則(複式簿記)以外の簡易な方法で記帳している場合(2に該当する場合を除く)…4。上記のいずれにも該当しない場合(記帳の仕方が分からない場合を含む)…5。確定申告の手引きには、この区分欄を設けた理由についての説明がないため、その狙いはわからないが、政府税制調査会の納税環境整備に関する専門家会合での議論が、背景にあることが推察される。

2021年6月15日の専門家会合に提出された全国青色申告会総連合の資料では、記帳実態の把握として「白色申告者の記帳は、複式簿記か簡易帳簿、パソコン会計か手書き記帳等の実態の把握ができていない。決算書(収支内訳書)または申告書に記帳方法を記載する欄を設けて、実態を明確化してはどうか」との記載があり、2021年分確定申告書での区分欄新設とその記帳区分の内容に関係していると思われるからだ。

なお、国税庁では、2023年1月から申告書Aを廃止し、申告書Bに一本化することを公表している。確定申告書Aは、所得が給与所得や公的年金、その他の雑所得のみとなっており、また、前年1年間の申告納税額が15万円以上の場合に前払いで納税をする予定納税がないことも条件だ。これに対して、確定申告書Bは、所得制限がなく誰でも使用でき、確定申告書Bのほうが項目が多く、より広い範囲をカバーしている。