2022-03-15
2022年度税制改正では、個人住民税における合計所得金額に係る規定が整備される。これは、2018年度税制改正で創設された公的年金等控除を合計所得金額に応じて判定する仕組みで、合計所得金額の範囲が所得税法と地方税法との違いから生じる混乱を是正する狙いがある。2018年度改正では、公的年金等収入が一定額を超える場合の控除額に上限を設定し、年金以外に特に高額な副収入がある年金受給者の控除額が引き下げられた。
具体的には、控除額を一律10万円(公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1000万円超2000万円以下は20万円、2000万円超は30万円)引き下げるとともに、公的年金等の収入金額が1000万円を超える場合の控除額については195万5000円の上限が設けられた。これによって、個人住民税においても、公的年金等控除の算定のため、合計所得金額を把握する必要が生じている。
しかし、総所得金額の範囲は、所得税法上は退職所得を含むのに対し、地方税法上は分離課税の対象(源泉徴収の対象)となる退職所得は含まれないとされている。ところが、市区町村が退職所得の有無を把握するには相当の事務負担が必要との意見があった。2022年度改正では、公的年金等控除額の算定における合計所得金額には、個人住民税における他の所得控除等と同様に、退職手当等を含まない合計所得金額を用いることとされる。
この改正は、2022年度分以後の個人住民税について適用される。また、給与所得者の扶養親族申告書及び給与支払報告書並びに公的年金等受給者の扶養親族申告書及び公的年金等支払報告書について、退職手当等を有する一定の配偶者及び扶養親族の氏名等を記載し、申告することとする等の措置を講ずる。この改正は、2023年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等について適用される。
そのほか、確定申告書における個人住民税に係る附記事項に、退職手当等を有する一定の配偶者及び扶養親族の氏名等を追加する。この改正は、2022年分以後の確定申告書を2023年1月1日以後に提出する場合について適用される。なお、現行では、給与所得者が退職所得(分離課税対象)を受給した場合、住民税の所得要件をクリアしているのに、配偶者控除の申告漏れが起きるケースがあるようなので注意が必要だ。