2022年中取得の避難指示区域内土地等の価額は「0」に

国税庁は、「2022年中に相続等により取得した原子力発電所周辺の避難指示区域内に存する土地等の評価について」の法令解釈通達(案)に対する意見公募(パブリックコメント)を5月12日まで実施している。同通達(案)は、2022年中に相続、遺贈又は贈与により取得した土地等で、2022年1月1日現在において、原子力発電所周辺の帰還困難区域に設定されている区域内に存するものの評価を行う場合等の取扱いを定めたものだ。

法令解釈通達(案)によると、2022年1月1日から同年12月31日までの間に相続、遺贈又は贈与により取得した避難指示区域内の土地等の価額については、その価額を「0」として差し支えない。また、2022年中に相続、遺贈又は贈与により取得した株式及び出資を純資産価額方式によって評価する場合における評価対象法人が保有する避難指示区域内の土地等の価額については、その価額を「0」として差し支えない、としている。

国税庁は、通達制定の背景について、相続税や贈与税において土地等(土地及び土地の上に存する権利)の価額は、時価により評価することとされているが、納税者が相続税等の申告に当たり、土地等について自身で時価を把握することは必ずしも容易ではない。そこで、相続税等の申告の便宜及び課税の公平を図る観点から、国税局(所)では毎年、全国の民有地について、土地等の評価額の基準となる路線価及び評価倍率を定めて公開している。

しかしながら、避難指示区域内の土地等(2022年1月1日現在において帰還困難区域に設定されている区域内に存する土地等)については、2021年分までと同様に、路線価等を定めることが困難な状況にある。それは、まず、(1)自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価額を把握することが困難又はできず、路線価等を定める環境や売買実例価額に準拠して評価する環境にないこと。

次に、(2)避難指示区域内の土地等については、使用収益制限などによって減価していると認められるが、その減価の程度を具体的に把握することは困難であること、また、(3)「時価」を超える評価は違法となるところ、相続税等の課税のための評価であることを考慮すると、評価の安全性を十分に考慮する必要があること、との路線価等を定めることが困難な状況にある理由を示している。