2022-04-21
路線価などに基づいて算定した相続マンションの評価額を巡り、その評価額が実勢価格より低すぎるとして再評価した国税当局の処分の妥当性が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(長嶺安政裁判長)は19日、国税当局が追徴課税した処分を適法とし、相続人側の上告を棄却した。評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額を国税当局が再評価できる例外規定を認めたわけだ。
この訴訟は、共同相続人である上告人らが、父親から相続した不動産について、路線価を基に評価して相続税の申告をしたところ、国税当局から、その不動産の価額は評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められるから別途実施した鑑定による評価額をもって評価すべきであるとして、それぞれ更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたため、上告人らがこれらの取消しを求めた事案である。
上告人らは、父親から相続した東京都内などのマンション2棟の評価額について路線価を基に計約3億3000万円と算定し、購入時の借入れと相殺して相続税を0円として申告した。これに対し、国税当局が、評価通達の定めによらず他の合理的な方法によって評価すべきとして、不動産の正常価格として算定した鑑定評価額に基づき、不動産の価額を約12億7000万円と見直し、相続税の総額を約2億4000万円とする更正処分等を行った。
最高裁は、相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、その財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するものではないと解するのが相当、と指摘。
その上で、本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきとして、国税当局が不動産の価額を鑑定評価額に基づき再評価したことは適法だと判示。国税当局の処分を妥当とした原審の判断を是認し、相続人側の敗訴が確定した。
最高裁判決の全文は↓
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/105/091105_hanrei.pdf