中小企業向け各租税特別措置を平均所得金額で制限

租税特別措置については、毎年度、期限が到来するものを中心に、各措置の利用状況等を踏まえつつ、必要性や政策効果をよく見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直しを行うとされているが、2017年度税制改正では、多額の所得を得ており財務状況が脆弱とは認められない企業が、中小法人課税の適用対象となっているとの批判を踏まえ、一定所得金額を超える事業年度の租税特別措置の適用を停止する措置が盛り込まれている。

具体的には、「法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度の適用を停止する」とされた。この改正は、2019年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。この租特の停止措置が適用される前に適用期限を迎える租特についても、2018年度以降の税制改正で適用期限が延長された場合には、この租特の停止措置の適用対象に含まれることになる。

対象となる措置は、租税特別措置における中小企業向け優遇措置で、中小企業技術基盤強化税制(研究開発税制)、公害防止用設備の特別償却、教習所用貨物自動車の特別償却、被災代替資産等の特別償却、中小企業等の貸倒引当金の特例などがある。これらの措置以外にも中小企業向けの特別措置は多岐にわたり、適用企業数が多い中小企業者等に係る法人税の軽減措置(税率19%→15%)は代表的な措置だ。

さらには、研究開発税制の上乗せ措置や所得拡大促進税制の上乗せ措置、中小企業投資促進税制、商業・サービス・農林水産業活性化税制、中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入制度の特例などもある。今回の租特の停止措置が適用されそうな企業では、これらの租税特別措置を利用しているケースも多いと思われる。これらの措置が一度に停止すると経営への影響は大きいとみられることから、今から対応策を考える必要があろう。