2017-03-13
2017年度税制改正法案には、非上場株式の類似業種比準方式の見直し等が盛り込まれているが、これを受けて国税庁は、「財産評価基本通達」の一部改正(案)についてパブリックコメントを3月30日まで実施している。今回の通達改正(案)では、2017年1月1日以後の相続・贈与等に適用される予定の取引相場のない株式の評価の見直し及び森林の木立の評価についての改正内容のみが示されている。
通達改正(案)の概要は、取引相場のない株式の評価について、類似業種比準方式は、(1)類似業種の株価について、現行に、課税時期以前2年間平均を追加、(2)類似業種の配当金額、利益金額及び簿価純資産価額について、連結決算を反映させたものとする、(3) 配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、現行の1:3:1から1:1:1に見直す。また、評価会社の規模区分の金額等の基準を、現在の上場審査基準に基づき、見直す。
非上場株式の評価方法の一つである類似業種比準方式は、類似業種の株価(上場会社との平均)と、各比準要素(配当、利益、純資産)に関する、評価対象会社と上場会社との比率を用いて、株価を求める。この各比準要素の比重は、これまでは「1:3:1」と利益金額に重きが置かれていたが、1:1:1に割合が均等になり、利益金額が大きい会社では評価額の引下げにつながることが考えられる。
また、非上場株式の評価においては、その評価会社の規模に応じて「大会社」、「中会社」、「小会社」に区分され、それぞれ採用できる評価方法が定められている。この規模区分は、従業員数や簿価総資産価額、取引金額を基準に判定されるが、その見直しにより、例えば、大会社の判定基準として従業員数が「100人以上」から「70人以上」に引き下げられ、これまでよりも大会社に該当しやすくなり、類似業種比準方式を採りやすくなる。
そのほか、中会社においては、類似業種比準方式、純資産価額方式のいずれによっても「Lの割合」という値を用いて評価するが、この「Lの割合」の値を判定する基準の従業員数や簿価総資産価額、取引金額も見直される。例えば、卸売業では、これまで「簿価総資産価額が14億円以上(従業員数が50人以下の会社を除く)」の場合に「Lの割合」の値が0.90となっていたが、これが「4億円以上(同35人以下の会社を除く)」に引き下げられる。
なお、2017年度税制改正で2018年1月1日以後の相続等での財産の評価に適用される予定の(1)広大地の評価について、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法への見直し、(2)株式保有特定会社(保有する株式及び出資価額が総資産価額の50%以上を占める非上場会社)の判定基準に新株予約権付社債を追加については、適用時期が先のため、改めて意見募集される予定だ。