2017-03-14
法務省の法制審議会民法(相続関係)部会では、新たな配偶者の居住用不動産の相続における優遇案を検討している。これは、同部会が配偶者保護のための方策等について、昨年6月にとりまとめた中間試案に伴って実施したパブリックコメントにおいて、同部会が示した配偶者の法定相続分を現行よりも引き上げる見直し案に反対する意見が多かったことから、その代替案として浮上したもの。
新たに示された優遇案は、長く連れ添った夫婦間で生前贈与や遺言による遺贈があった場合、贈与(遺贈)された配偶者を相続で優遇するというもの。婚姻期間が20年以上経過した夫婦で、配偶者が居住用の建物や土地の贈与を受ける場合を対象とし、贈与者の死亡により相続人間で遺産分割する際に、配偶者が贈与(遺贈)を受けた居住用財産については遺産分割の際に遺産の計算に含めないこととする。
相続税法には、20年以上連れ添った夫婦間で住宅や住宅取得資金の贈与が行われた場合には、2千万円まで非課税とする「贈与税の配偶者控除」の規定がある。しかし、同特例を適用して贈与した財産でも、贈与者の死亡後は、特別受益として遺産分割協議や遺留分減殺請求の対象となってしまう。税法と民法は別物だからだ。今回の法制審の新しい案は、相続税法の「贈与税の配偶者控除」の考え方を民法にも連動させるものだ。
相続税法における特例の趣旨は、(1)夫婦の財産は夫婦の協力によって形成されたものであるとの考え方から、夫婦間においては一般に贈与という認識が薄いこと、(2)配偶者の老後の保障を意図して贈与される場合が多いこと、などが挙げられる。この趣旨を生かし、民法上も優遇措置を講じることで、遺された配偶者が住宅を確保しやすくなるとともに、住宅以外の遺産についても取り分が得やすくなるとみている。