2022-05-10
消費税は、原則として、実際に受領した課税資産の譲渡等の対価の額が課税標準となる。例外として、対価を得ない取引に対して、対価を得て行う資産の譲渡とみなして課税される場合と一定の取引でその対価の額が時価に比べて著しく低い場合には、その時価を対価の額とみなして課税される。これには、個人事業者の自家消費と法人がその役員に対して行う資産の贈与及び著しく低い価額による譲渡がある。
そこで、法人が課税資産をその役員に対して贈与した場合には、課税資産を役員に贈与した時におけるその資産の価額、すなわち時価に相当する金額を課税標準として消費税が課税される。ただし、棚卸資産を贈与した場合において、その棚卸資産の仕入価額以上の金額、かつ、通常他に販売する価額のおおむね50パーセントに相当する金額以上の金額を対価の額として確定申告したときはその取扱いが認められる。
また、法人が課税資産を役員に対してその資産を著しく低い価額により譲渡した場合、すなわち低額譲渡した場合には、実際に役員から受領した金額ではなく、その譲渡の時におけるその資産の価額、いわゆる時価に相当する金額を課税標準として消費税が課税される。この場合の、その資産の価額に比べて著しく低い価額により譲渡した場合とは、その資産の時価のおおむね50パーセントに相当する金額に満たない価額により譲渡した場合をいう。
なお、その譲渡された資産が棚卸資産である場合で、その棚卸資産の譲渡金額が、その資産の仕入価額以上の金額で、かつ、通常他に販売する価額のおおむね50パーセントに相当する金額以上の金額であるときは、著しく低い価額により譲渡した場合には該当しないものとして取り扱われる。ただし、法人が課税資産を役員に対して著しく低い価額により譲渡した場合でも、時価ではなく実際の対価の額による課税が認められる場合がある。
それは、法人が課税資産を役員に低額譲渡した場合でも、その資産の譲渡が、役員及び使用人の全部について一律にまたは勤続年数などに応じて合理的に定められた値引率に基づき行われた場合が該当し、こうしたケースでは、時価ではなく実際の対価の額により課税される。ところで、個人事業者の場合は、自分に対して有償で資産を売却することはあり得ないので、低額譲渡はなく、自家消費の場合のみにみなし課税されることになる。