既成市街地等の区域内からその区域外への買換え特例

法人が、2023年3月31日までの間に、所有する棚卸資産以外の特定の資産(譲渡資産)を譲渡し、譲渡の日を含む事業年度に特定の資産(買換資産)を取得し、かつ、取得の日から1年以内に買換資産を事業の用に供した場合(見込みも含む)に、買換資産について圧縮限度額の範囲内で帳簿価額を損金経理により減額するなどの一定の方法で経理したときは、その減額した金額を損金の額に算入する圧縮記帳の適用を受けることができる。

この特定資産の買換えの特例は、譲渡資産の内容に応じた買換資産を取得して事業の用に供する場合に限って認められている。この組合せの1つに、既成市街地等の区域内にある一定の建物またはその敷地の用に供されている土地等(土地または土地の上に存する権利をいう)を売って、既成市街地等の区域外にある土地等、建物、建物附属設備、構築物または機械および装置に買い換える場合がある。

例えば、機械部品の製造を行う法人が既成市街地等の区域内の工場とその敷地を譲渡して、既成市街地等の区域外に同じく工場とその敷地を取得する場合がある。この既成市街地等の区域内から区域外への買換えの特例を受ける場合には、注意点がいくつかある。それは、まず、(1)既成市街地等の範囲がある。既成市街地等とは首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県)、近畿圏(大阪府・京都府・兵庫県)、中部圏(愛知県)にある一定の区域をいう。

一定の区域とは、例えば首都圏では、東京都が23区・武蔵野市の全域・三鷹市の特定の区域、横浜県が横浜市・川崎市の特定の区域、埼玉県が川口市の特定の区域が該当する。次に、(2)譲渡資産は、事業所(福利厚生施設を除く)として使用している建物及びその附属設備またはその敷地の土地等で、取得した日の翌日から譲渡した年の1月1日までの所有期間が10年を超えるものに限られる。(3)買換資産の取得には、建設及び製作が含まれる。

さらに、(4)買換資産が農業用または林業用の資産である場合は、既成市街地等以外の地域で、かつ、市街化区域以外の地域内にあるものに限られる。(5)買換資産である土地等の面積は、譲渡資産である土地等の面積の5倍までに制限されているので、買換えにより取得する土地等のうち譲渡資産である土地等の面積の5倍を超える部分は買換えの特例の対象となる買換資産とはならない、などが注意点として挙げられる。