2017-03-21
総務省はこのほど、今年1月からスタートしている大阪府の宿泊税について、民泊の利用者からも徴収するという府の改正条例に同意した。宿泊税は、2002年10月に東京都が初めて導入。これに続き大阪府も「大阪が世界有数の国際都市として発展していくことを目指し、都市の魅力を高めるとともに観光の振興を図る施策に要する費用に充てるため」として導入を決め、2017年1月から徴収を開始している。
宿泊税は、観光振興などを目的としてホテルや旅館の宿泊客から一定額を徴収する法定外目的税の一つ。自治体が独自に条例を定め、総務相の同意を受けて導入する仕組みだ。大阪府の宿泊税は、宿泊料金1人1泊1万円以上で100円、1万5千円以上で200円、2万円以上で300円、の3段階(東京都は1万円以上で100円、1万5千円以上で200円の2段階)。大阪府では年間10億円程度の税収を見込んでいる。
民泊への課税を盛り込んだ改正条例は7月1日に施行となる予定だが、厚生労働省が実施した「全国民泊実態調査」では、昨年末時点で許可を取得している合法民泊は16.5%で、民泊の実態は把握しきれていないとの指摘がある。特に、東京都特別区や政令指定市の大都市圏中心市では営業許可を取得している物件が1.8%に過ぎない。せっかくの民泊からも課税との方針も、課税対象の把握が不十分では“絵に描いた餅”になりかねない。
ところで、宿泊税を導入しているのは今のところ東京都と大阪府のみだが、ここにきて京都市と金沢市の2市が宿泊税の導入を検討していることが明らかになっている。京都市は、昨年12月に開かれた「観光関連の新税などを検討する有識者委員会」で、多くの委員が「宿泊税」に賛同したという。京都市は、2015年の市内の延べ宿泊客数2091万人から、東京都などと同水準の100~200円を徴収すると、税収は20億円ほどと見込んでいる。
また、北陸新幹線の開業などで観光客が増えている石川県金沢市でも宿泊税の導入に向けて動き出す。同市は、昨年11月の金沢経済同友会との意見交換会で提案を受け、来年度、有識者会議と下部組織のプロジェクトチームを設置して、新幹線開業の影響を正負両面から検証する考えを示した。ただし、総務省によると、市町村での宿泊税の導入例はなく、「観光客や旅館関係者の反発が心配」との懸念の声もあり、今後の動向が注目される。