2022-06-20
いわゆるマルサと呼ばれる査察は、脱税でも特に大口・悪質なものが強制調査され検察当局に告発されて刑事罰の対象となる。国税庁が公表した2021年度査察白書によると、同年度に査察で摘発した脱税事件は前年度より10件少ない103件で、その脱税総額は前年度を12.8%上回る約102億円だった。今年3月までの1年間(2021年度)に、全国の国税局が査察に着手した件数は116件と、前年度(111件)を5件上回った。
継続事案を含む103件(前年度113件)を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、うち72.8%に当たる75件(同83件)を検察庁に告発。この告発率72.8%は前年度を0.8ポイント下回ったが、昨年度に引き続き高水準だった。2021年度は、消費税の輸出免税制度を利用した消費税不正受還付事案を9件、自己の所得を秘匿し申告を行わない無申告ほ脱事案を16件、国際事案を17件、それぞれ告発している。
近年、査察における大型事案は減少傾向にあり、2021年度の脱税総額102億1200万円は、ピークの1988年度(約714億円)の約14%にまで減少している。1件当たり平均の脱税額は9900万円で、ここ5年は1億円を下回っている。告発分の脱税総額は前年度を12.3%下回る60億7400万円となり、統計が残る1972年度以降、過去最少となった。告発分1件当たり平均の脱税額は8100万円となっている。
告発分を税目別にみると、「法人税」が前年度から12件減の43件で全体の約57%を、脱税総額でも約35.2億円で約58%をそれぞれ占めた。「所得税」は同1件増の9件(脱税総額約7.8億円)、「消費税」は同3件増の21件(同約16.6億円)、「源泉所得税」は同横ばいの2件(同約1.2億円)、「相続税」は0件(前年度0件)。消費税の告発件数のうち9件は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)のものだった。
告発件数の多かった業種は、「建設業」が19件で前年度の2位からトップ、次いで前年度1位の「不動産業」が15件、「卸売業」が4件で続いた。なお、2021年度の査察では、太陽光発電設備に係る請負工事及びインターネットショッピングサイトを利用した輸入雑貨の通販等の事案や下請け業者から謝礼金を受領した建設会社元従業員などを告発し、時流に即した社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対しても積極的に取り組んでいる。
同査察白書の概要は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/sasatsu/r03_sasatsu.pdf