2022-06-21
総務省の「郵便局データの活用とプライバシー保護の在り方に関する検討会」は、郵便局が保有する転居届に係る情報等を提供することが可能となる事例として、国税や地方税の徴収のために要請があった場合等を、郵便分野ガイドラインの解説に明記することを、先日公表した報告書(案)に盛り込んだ。ガイドラインは本年7月に改訂される予定。郵便法では、個人情報の第三者への提供が原則として認めてられていない。
国税及び地方税には、官公署等に対して徴収のための情報提供の協力要請を求めることができるとの規定があるが、現行のガイドラインの解説では、転居届に係る情報等の「郵便物に関して知り得た他人の秘密」については、法律上の照会権限を有する者からの照会がなされた場合でも、原則提供できないとしている。ただし、情報を用いることによる利益が秘密を守る利益を上回ると認められたときには、第三者提供が可能と明記している。
ところが、ガイドラインの解説上、具体的事例に乏しいことから、情報提供が可能となるかとの照会に対して回答すべきか郵便現場レベルでの判断が困難なため回答していないのが実情。実際に、町税等の滞納者が住民票を移動せずに転出している場合、その所在を特定することが困難なことから、郵便局に対して転居届の記載内容等を照会したが、個人情報保護法及び郵便法の規定による守秘義務の関係から回答不可とされたとの事例もある。
改訂されるガイドラインの解説には、情報の提供を可能とするケースとして「徴収職員等が、国税徴収法や地方税法の規定に基づき、国税・地方税に関する調査について必要があるときに行う協力要請として、住民票を異動せず転出し所在の把握が困難となっている滞納者の転居届に係る情報を照会してきた場合であって、事業者(日本郵便)が、滞納者の同意を得ることなく、転居届に係る情報を提供する場合」と明記されることになった。
転居届に係る情報を提供する理由について、「税の賦課徴収は、憲法が規定する納税の義務を担保する極めて公益性の高い業務であるところ、住民票を移さずに転出する滞納者についてはその所在の把握が困難であり、滞納整理事務に支障が生じているが、滞納者の転居情報を提供することにより、滞納整理事務を迅速化・効率化することで納税の履行を促し、国民の納税義務における公平性が確保される」と説明している。