2022-07-07
日本税理士会連合会はこのほど、2023年度税制改正に関し32項目に及ぶ改正建議を盛り込んだ建議書を発表した。その中で、特に、重点建議項目として、(1)適格請求書等保存方式の導入時期を延期するか、少なくとも中小企業者の実務を踏まえた柔軟な運用を行うこと、(2)消費税の非課税取引の範囲を見直すこと、(3)基礎的な人的控除のあり方を見直すとともに、所得計算上の控除から基礎控除へのシフトを進めること、の3項目を掲げた。
(1)では、適格請求書等保存方式においては、取引のつど、適格請求書等の有無の確認が必要であり、この確認は少額取引(3万円未満)についても一定の取引以外の取引では必要となる。特に、商慣行として取引の相手方が振込料を差し引いて振り込んできたときには、新たに返還インボイスの交付・確認等の事務負担が生じる。これらは、事業者及び税務官公署の事務に過度な負担を生じさせることから、見直すべきだとした。
免税事業者は適格請求書等を発行できないため、対事業者取引から排除されることなどから、廃業を余儀なくされる事業者が増える可能性がある。一方で、対消費者取引を行う免税事業者は、あえて課税事業者を選択する必要性は少なく、免税事業者を維持する可能性が高い。このため、事業者の負担と徴税コスト等を考慮し、仕入税額控除方式及び免税点制度等の見直しを含めた消費税のあり方について、抜本的な再検討を求めている。
(2)について、消費税は、財貨・サービスによる付加価値に対して均一課税が原則であり、非課税取引の範囲は最小限にすべきだ。非課税取引については、売上に対して取引先から消費税相当額を収受できない一方で、商品調達や設備投資等の仕入税額控除は認められない。このため、非課税取引となる資産の譲渡等をする者は、最終消費者ではないにもかかわらず、仕入れに係る消費税について実質的に負担する仕組みとなっていると指摘。
非課税取引として消費税法別表第一(第6条関係)に掲げられる取引には、「税の性格から課税対象とすることになじまないもの」と「社会政策的な配慮に基づくもの」があるが、社会政策的な配慮に基づくものや日本郵便株式会社等が行う郵便切手類の譲渡については、課税取引とし、課税標準及び仕入税額控除の計算過程に取り込み、小規模事業者判定における売上高基準にも反映させ、計算をできるだけ平易にすべきだとした。
(3)については、給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、基礎的な人的控除を引き上げるべきだ。その際、基礎的な人的控除の中には適用関係が人的事情や所得の多寡に左右されるものがあること等を踏まえ、全ての者に適用されるべき基礎控除に負担調整の比重を移すことが望ましいとの考えを示した。
日税連の「2023年度税制改正に関する建議書」は↓
https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/nichizeiren/proposal/taxation/tax_reform/kengisyo-R5.pdf