2022-07-29
国土交通省がこのほど発表した長期譲渡所得の100万円控除制度の利用状況によると、「低未利用土地の利活用促進に向けた長期譲渡所得の100万円控除制度」について、制度が開始された2020年7月から2021年12月までの、自治体による低未利用土地等確認書の交付実績は5150件だった。譲渡前の状態は、空き地が約5.5割、譲渡後は住宅としての利用が約6割。所有期間については30年以上保有している土地等が約6割だった。
低未利用土地の譲渡に係る100万円控除制度は、地方部を中心に全国的に空き地・空き家が増加するなか、新たな利用意向を示す者への土地の譲渡を促進するため、個人が保有する低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の金額から100万円を控除することで、土地の有効活用を通じた投資の促進、地域活性化、更なる所有者不明土地の発生の予防を図ることを目的に、2020年7月1日から開始、2022年12月31日まで適用する。
新たな特例措置は、(1)土地とその上物の譲渡の対価の額の合計が500万円以下、(2)都市計画区域内の低未利用土地等(譲渡前に低未利用であること及び譲渡後に買主により利用されることについて市区町村が確認したものに限る)、の要件を満たす取引について、売主の長期譲渡所得から最大100万円控除。宅建業者が空き家となっている中古住宅を買い取って、一定の質の向上を図るリフォームを行った後売却する(買取再販)場合も含む。
自治体が低未利用土地等の譲渡に対して確認書を交付した件数は5150件だったが、全ての都道府県において、交付実績があり、平均して約110件。1件当たりの譲渡の対価の額は平均247万円だった。都道府県別に確認書交付数をみると、「北海道」が351件で最多、次いで「茨城県」325件、「鹿児島県」244件。市町村別では、「宮崎県都城市」が94件で最多、次いで「山形県鶴岡市」64件、「三重県津市」57件と続く。
石川県輪島市の事例をみると、相続で、老朽化した空き店舗を取得したが、相続人は遠方に居住しており、管理が負担になっていた。宅建業者に空き家バンクの登録の相談をしたところ、宅建業者の紹介で購入者が現れた。特例措置により、譲渡による税金が減額されることから、これが売却価格交渉のきっかけとなり、その結果、売却額500万円で取引が成立。買主は購入後、改修し、ライダーのためのガレージハウスとして使用している。
また、山形県鶴岡市の事例では、3人の地権者が所有する低額の狭小地2つと、共有の私道について、単体の売却を行った場合は、将来住宅を建てる際に接道要件を満たさず、建築確認を受けることができない可能性があった。特例措置により売却後に手元に残る額が増えたこともあって、売却のインセンティブとなり、宅地建物業者のコーディネートにより、まとまった事業用地として一括譲渡されている。
この件については↓
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00078.html