役員給与~⑨~

こんにちは、渡辺です。

本日は台風一過で青空が広がってますね。昔は台風一家だと勘違いして台風に家族はあるのかと思ったことがあります。子どもの頃にはありがちな間違えですね。

さてさて、役員給与関連もこれでラストとなりますが、役員退職金の損金算入時期についての事例です。
この度創業以来当社の経営を担ってきた役員が退職することとなったので退職金を支払いたいと考えておりますが、あいにく資金繰りの都合で一括して支給することが困難であるため3回に分けて支給することを提案し了解を得ました。このような場合に退職金の損金算入時期はどうなるのでしょうかというものです。

結論は原則として株主総会の決議等によりその額が確定した日の属する事業年度となりますが、分割支給の場合、支給の都度損金経理し、支払った日の属する事業年度に損金算入することも可能となります。

では少し解説を加えていきます。
(1)役員退職金の損金算入時期
退職給与は役員であろうと従業員であろうと、退職に起因して支給される給与であることから、損金算入の時期は原則としてその役員・従業員が実際に退職したタイミングであると考えられます。
そのうち役員の退職金については株主総会での決議が必要となりますので、その決議により具体的な金額が確定した日の属する事業年度の損金に算入されます。ただし、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度においてその支払った額について損金経理しているときは、その支払った日の属する事業年度において損金に算入されます(法基通9-2-28)。

(2)分割支給の場合
一方、役員退職給与は金額が多額に上るため、資金繰りの都合等で一時に支払うことが出来ず、分割で支給するということもあります。その場合次のいずれかの処理方法により損金算入されることとなります。
 ①株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度において損金算入する。
 ②支給の都度損金経理し、支払った日の属する事業年度において損金算入する。

つまり分割支給の場合であっても原則的な取扱に従うということです。
ただし、分割支給が長期(例えば5年超)にわたって行われるときは退職年金との差が判然としなくなると考えられることから、場合によっては退職年金と同様に取り扱われるリスクも考えられます。

(3)退職年金の場合
退職年金の損金算入時期は、退職給与の原則的な取扱とは異なり、その年金を支給すべきときとされています。すなわち、退職年金はそれが有期であるか終身であるかを問わず、その支給が長期にわたるため、退職時にその総額を費用と認識するのは妥当ではなく、支給時期の到来を持って損金に算入することとなります。したがって、退職年金の総額を未払金等に計上した場合においても、その時点で損金に算入できるわけではない(法基通9-2-29)ことに注意が必要です。

さて、いかがでしたでしょうか。9回にわたって役員の給与と退職金についてみてきました。
非常に多くのルールが存在し、恣意性の入る余地がないように出来ていますね。これまで紹介してきたものはほんの一部ではありますが、どれも基本的な部分です。まずはこの基本的なルールを覚えるとともに、固別の事例はその都度吸収し身に付けていきたいですし、これからもまた新しいことに挑戦していこうと思います。